「金蜜花火」 開発ストーリー。

とあるリンゴの
小さなシンデレラ物語

KINMITSUHANABI

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INTRODUCTION

動き始めた金蜜花火ストーリー

金蜜花火の元となるこの「秋田19号」は、その多くが小玉で収穫されることや、皮の色が黄色〜黄緑色で、その一部に赤斑や褐色が混じるという外観の悪さから、「共同出荷(JA等を介して広く大量に流通させること)には向かない」と評価され、次世代リンゴの開発に向けた優良遺伝資源の保護と直売等の個人向けとして、系統番号であった「秋田19号」のままの品種名で品種登録されたものです。
このため、品種登録当時は販売促進に関わる県の助成は行わないとされました。
ただ、中身は非常に優秀だったため、一部の生産者から強い支持を得ている品種でもありました。この「秋田19号」というリンゴを多くの方に食べて頂きたいという生産者と当社の想いが合致することによって、より広い流通への道筋が開かれ、秋田19号と金蜜花火のストーリーは動き始めるのです。

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CHAPTER 01

秋田19号の誕生と
その評価

2000年
初結実(秋田2号×やたか)
2012年
試験一旦終了共同出荷には向かないと評価
2013年
試験一旦終了試験再会
2017年
育成完了評価変わらず
品種登録申請優良遺伝資源としての保護目的
2019年
品種名 申請「秋田19号」が登録

2019年(平成31年)4月23日 秋田県で育成したリンゴの「秋田19号」が種苗法で品種登録された。
「秋田19号」は1988年(昭和63年)に「秋田2号(ふじ×東光)」と「やたか(国光×デリシャス)」の組み合わせで改良(交雑)した種子を長年に渡って育成してきた秋田県のオリジナル品種である。
2000年(平成12年)秋に初結実して以降、試食検討会等を重ねながら現地試験を進めていたが「小ぶりで外観が悪く、共同出荷(JA等を介して広く大量に流通させること)には向かない」という評価に至り、2012年(平成24年)に現地試験は一旦終了となる。
当時の基準とは“大玉”で“外観が綺麗”であること。小玉で、黄色~黄緑色に赤斑や褐色の混じるくすんだ外観の悪さを持ち合わせていた「秋田19号」にそういった評価が下されるのは、むしろ当然のことでもあった。
翌年には、一部の生産者から要望が出されたのを機に現地試験が再開され、2017年(平成29年)をもって一連の育成完了をみるも、その評価は変わることがなかった。
共同出荷には向かないと評価されていたが、蜜入りの多さや食味、香りは優秀だったため、次世代リンゴの開発に向けた優良遺伝資源の保護直売等の個人向けに、同年10月に系統番号であった秋田19号をそのまま品種名として品種登録申請、2019年(平成31年)4月23日に品種登録された。

秋田19号普及推進会会長磯部 陽悦

この小ぶりさと外観の悪さは如何ともしがたい。「美味しいけれども、共同出荷できず一般販売には向かない」リンゴに携わった人なら誰もがそう思うでしょう。でも中身は美しく、本当に美味しい。だから、自分で食べる用にでも栽培したい、という気持ちは当初からありました。

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CHAPTER 02

秋田19号
普及推進会の結成

2018年
秋田19号
普及推進会 結成

「共同出荷は無理だとしても、直売として販売してみたい。」
「秋田19号」の欠点を理解しつつも、蜜入りの多さと美しさ、食味、香りといった品質の高さに惚れ込み続ける生産者たちの間から自然と声が上がる。
そして、平成30年(2018年)9月、思いを同じくする11人の生産者たちが集い、
ここに「秋田19号普及推進会」が結成された。
当会の結成によって実現した継続的・安定的生産基盤の確立こそ、
後の「金蜜花火」誕生に大きな礎を築くものであった。

秋田19号普及推進会 顧問(初代会長)平良木 忠男

共同出荷に向かないことは私も承知していました。しかし、中身の素晴らしさはどうしてもあきらめきれない。 なので、自分たちだけでも直売しようと仲間に声をかけました。みんなが集まってくれたこと、協力してくれたことは大変嬉しかったです。

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秋田19号普及推進会 会員佐藤 文雄

「秋田19号を作りたい」という平良木さんの熱意は凄かったです。あの熱意にみんなが集まりました。それが「秋田19号普及推進会」という形になって今日に至るんですね。これが無ければ金蜜花火の誕生はありませんでした。

CHAPTER 03

果実部長
保坂の決意

2016年
秋田19号
お披露目
2018年
秋田19号
普及推進会 結成

「秋田19号普及推進会」が結成される2年前の2016年(平成28年)、
秋田市地方卸売市場でも「秋田19号」がお披露目されていた。

「中身は素晴らしいが、この小ぶりさと見た目の悪さでは販売レベルにない。」

市場関係者(販売サイド)から見た「秋田19号」の評価もまた同じであった。
そんな酷評飛び交う中、ただ一人「秋田19号」に一瞬で心を奪われた人間がいた。
当社で30年以上リンゴの販売に携わってきた果実部長の保坂である。

「こんなリンゴは初めてだ…。
面白い、世の中の人に食べさせてみたい。」

日々高まりゆく自身の熱意をもって、保坂は会社に取扱いを打診した。

山瀬青果㈱ 果実部 部長保坂 隆

会社から秋田19号の取扱い許可は簡単には出ないだろうなとは思っていました。ですから、自分に相当な熱意が必要だと思って、どんなことを言われても、絶対折れない覚悟を持って会議に臨んだのです。自分はもう戦闘態勢が出来ていましたね笑

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しかし、その保坂の熱意に反して、当初の会社の返答は冷ややかなものだった。

「この蜜入りの多さと美しい紋様、ほとんど酸味を感じられない濃厚な甘み、そして上品でありながらしっかりと主張する香り。素晴らしいリンゴだ。しかし、当社では取り扱うことはできない。」

唇をかみしめる保坂に対して会社の評価は続く。

「中身の優秀さは認める。だが、このリンゴは全く美味しそうに見えない。
これは致命的だ。同じ棚に真っ赤で大きなフジや綺麗な黄色の王林が並べて売っていれば、消費者は間違いなくそちらを選ぶだろう。小さく見た目の悪いリンゴは消費者に選ばれることはない。」

しかし、保坂は微塵も揺らぐことのない熱意をもって反論する。

「世の中には高品質なリンゴがひしめき合っている。秋田19号は決してそれに引けを取らないし、それ以上だ。外観の悪さやそこからは想像できない中身の美しさとのギャップはむしろ強烈な個性になり得るはずだ。」

社内評価と保坂との議論は完全に平行線をたどり、交わる気配はなかった。

山瀬青果㈱ 常務取締役橋本 一昭

セオリー通りなら売れるリンゴではないです。それは保坂が一番わかっているはず。しかし、そこを押してプレゼンしてくる保坂には何かがある…そっちの興味の方が大きかったです笑
とにかく、チャレンジしようとする人間を拒む会社であってはならないと考えています。これは企業文化の醸成案件でもあると感じました。
「やりたい!」「よし、やってみろ!」と軽快にいける会社じゃないとイノベーションは起こりませんから。

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(セオリー通りなら売れないはずだが…、この品質は非常に面白い)
一向に歩み寄りをみせない両者の主張の中で、常務取締役の橋本は一人沈黙して考えていた。

「この案件は、青果物を通して広く“感動”と“ワクワク”を届けるという当社の理念に合致している。そして、売れる売れないを決めるのは消費者のはずだ。」

橋本は“試験販売”の実施と、そのデータを持って当社の“取扱いの有無”を決める方針を打ち出した。

「そしてそれは、消費者の反応を間近でつかめる市場開放デーで行う。」

市場開放デーは、月に一回だけ卸売市場が直接消費者に販売できる機会だ。毎回多くの消費者が来場しては、開始1時間で売り切れが続出する大人気イベント。「秋田19号試験販売」の舞台として選ばれたのは、2017年(平成29年)12月開催の市場開放デーだった。

CHAPTER 04

市場開放デーと
消費者の評価

2017年
秋田19号試験販売
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試験販売(市場開放デー)当日の朝。
売場には秋田19号の生産者4名も応援に駆け付けた。
いよいよ市場開放デーがスタート。
12月ということもあり、年末年始の食材を求め、いつになく多くの消費者が来場していた。

見慣れない、小ぶりで外観の悪いリンゴ。そしてその名前が「秋田19号」という不慣れさ。

当然消費者は戸惑い、横目で見るだけで他の青果売場へと足を移していく。
人が入り乱れ、威勢のいい声が飛び交う他の売場の盛況ぶりに反して「秋田19号」の売場は閑散としていた。

そんな中にあっても、応援に駆け付けた秋田19号の生産者たちの熱意ある声掛けは続く。

「見た目は悪いけど、一度食べれば虜になる。是非食べてみてください!」

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山瀬青果㈱ 果実部 部長保坂 隆

実際に中身は抜群の美味しさですから、常務が試食を兼ねた試験販売をすると言ったときは100%勝ったと思いましたよ笑 最初の売場の閑散ですか?全く気になりませんでした。
中身を知ってもらえれば必ず完売できるだけの実力を「秋田19号」は持っていますからね。

生産者による必死の呼びかけに、一人、また一人と立ち止まる。

外観からは想像もできない蜜入りの多さと、その蜜が放射線状に散らばるという紋様の美しさ、試食による想像を超える甘さの実感とその香りの良さに、時折、歓声も上がり始めた。

「秋田19号」の確かな実力は時間の経過と共に着実に広がりを見せ、最終的には多くの人だかりをつくって、市場開放デーの終了時間を待たずに完売となっていた。

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秋田19号普及推進会 会計佐藤 廣

外観から興味をもっていただけるお客様はほとんどいないだろうと思っていましたから、とにかく中身を見てもらおう、特徴を知ってもらおうと自分達から積極的に声を掛けに行きました。
実際に見てもらったり、試食してもらったりすると、みなさんビックリした顔をするので、楽しかったですよ。

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試験販売の実績もさることながら、当社を一番驚かせたのは販売終了後も日々続く消費者の反応の強さだった。

「もうないのか。箱で買いたい。」
「今後の販売スケジュールはいつなのか」
「産地にあるなら産地まで買いに行ってもいい。」

12月の繁忙期の中、橋本はその対応に付きっきりとなることもあり、嬉しさを含めた悲鳴を上げていた。
最初は冷ややかに見ていた社内であったが、市場開放デー終了後には誰一人として取扱いに反対する者はいなかった。

CHAPTER 05

金蜜花火の誕生

当社は「秋田19号普及推進会」と連携し、正式に「秋田19号」の取扱いをスタートした。日々広がりをみせる認知度に、社内では「ブランド化」への意識が芽生え始める。「ブランド化」は長期に渡る投資であり、当社のような小さな仲卸業者にあってはリスクの大きさも決して無視できない。当然社内においても慎重論はあったが、橋本は
「試験販売時と同じ。企業理念に合致する以上迷わず動こう。」
と社内を鼓舞し、ここに山瀬青果によるブランド化への道が拓かれることとなった。

「ブランド化」にあたって最も難航したのが「ブランド名」をどうするか?である。
名前によるイメージのしやすさ、覚えやすさはブランド化の成否を分ける重要なポイントだけに多くの時間と労力が費やされた。
「秋田19号」に関する多方面からの評価を基に、キーワードを抜き出すかたちで地道に候補名を積み上げ、最終的な数は50以上にも達していた。

社内でも様々な意見交換を行いながら、最終決定は保坂に一任。
熟慮に熟慮を重ねた末に保坂がたどり着いた名前、それが「金蜜花火(きんみつはなび)」だった。

秋田19号普及推進会 顧問(初代会長)平良木 忠男

生産者として一生懸命作ることは出来ても、それをどう販売していったらいいかは正直わかりませんでした。ですので、山瀬青果の保坂さんの力を借りられたことは本当に有難かったです。
また、当会の立ち上げ、運営に関しても本当にいろいろな方面からご協力を頂き、生産者の想いだけではここまでの発展はなかったと思います。本当に感謝しています。

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金蜜花火
金色の蜜がまるで花火のように散りばめられた
希少性の高いリンゴ

全ての人がこの命名を歓迎し、当社が「金蜜花火」の商標登録を行った。

名前が決まったことでイメージが明確になり、その後のロゴマークの設定やキャッチフレーズ、包装デザインなどは速やかに進行していった。

山瀬青果㈱ 果実部 部長保坂 隆

外観の悪さは誰が見ても一目瞭然。だからこそ、内側に焦点を当てる名前が必要でした。金色の蜜がまるで花火のように散りばめられた美しい内面を素直に表現することで、イメージのしやすさ、名前の覚えやすさに力を入れました。また、秋田19号の長きにわたる試験に携わってきた開発・育成者の皆さんと、生産者さんの惜しみない努力の結集によってこの世に実現をみた希少性の高さを考えれば、高級感のある名前であることも必要だと思いました。
悩みに悩みましたが、我ながら良い名前を付けたと笑

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2020年
金密花火
デビュー

2020年(令和2年)12月19日。全ての準備を完了し、スーパーマーケットの店頭にて
「金蜜花火」はデビューを飾る。

この日も秋田19号普及推進会の生産者4名が応援のため駆け付けた。
生産者から熱意のこもった丁寧な説明を受けながら明らかになる金蜜花火の実力に多くの消費者が魅了され、19日(土)、20日㈰の二日間をもって完売する結果となった。
そのデビューは報道機関からも取材を受けるほどの華々しいものだった。

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CHAPTER 06

金蜜花火と共に
未来へ

「金蜜花火」は、令和2年(2020年)の発売開始以降、毎年販売しては2~3日で完売するという人気ぶりを続けている。全国からの注文も入るようになった。秋田県内の量販店や他県市場からの引き合いも年々強まってきている。
しかし、こういった右肩上がりの需要に生産量が追い付かず、未だ希望する多くの人の手に渡っていないのが実情だ。生産の急拡大が求められるが、質は絶対に落とせない。抱える課題は多い。

山瀬青果㈱ 常務取締役橋本 一昭

金蜜花火だけをどうこうするという枠組みではなく、金蜜花火を一つの明るい事例として提供し、秋田県農業に従事する多くの、そして次世代の生産者にとって”作る意欲・やりがい”の源泉にもなり得るよう、金蜜花火を毎年ブラッシュアップしていきたいですね。

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「産地とも協力して、毎年一つずつであっても着実に問題を解決していきたい。」
と未来を見据えて保坂は語る。

「金蜜花火だけをどうこうするという枠組みではなく、金蜜花火を一つの明るい事例として提供し、秋田県農業に従事する多くの、そして次世代の生産者にとって”作る意欲・やりがい”の源泉にもなり得るよう、金蜜花火を毎年ブラッシュアップしていきたい。」と橋本が付け加えた。

「山瀬青果の名前は知らなくとも”金蜜花火”なら知っている、そんな消費者さんもかなり増えましたね。今後、金蜜花火がどう成長していくのか、自分の孫の成長を見るかのような楽しみがあります。私もまだまだ頑張らないと。」

解決すべき多くの課題を抱えつつも、インタビューに答える保坂の顔は少し照れくさそうに、また終始明るかった。

金蜜花火の物語は
まだ始まったばかりだ

SALES INQUIRY

販売について

金蜜花火は、毎年12月中旬に販売予定です。
販売日時が確定(11月下旬頃)しましたら、
当社オンラインストアにて告知の上、販売いたします。

RECRUIT

生産者募集

金蜜花火(秋田19号)を栽培し、
出荷していただける方を募集しています。
一緒に金蜜花火(秋田19号)を育てていきませんか?
当社で受付けし、秋田19号普及推進会様の方へ取次いたします。
下記、電話またはメールにてご連絡下さい。
担当:常務取締役 橋本 または 果実部長 保坂