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2025.08.26

ブログ 経営

NO.183 善意の落とし穴 ~組織を蝕む“良かれと思って”~

「なぜ、一人ひとりはこんなにも善意があふれているのに、組織としては不満や不公平感がにじむのか…?」
そんな疑問に対して、私がたどり着いた一つの答えがあります。

組織の中で起きる不満や不公平感の原因を探っていくと、一般的に多いと予想されがちな“悪意や怠慢”によるものは、実はごくわずかです。むしろ、その大半は、皆が「それぞれの善意で動いている」ことに起因している——これが私の見解です。

それぞれの善意によって業務の境界線が曖昧になり、結果として負担や不公平感が生まれてしまう。このような構造は、誰かが悪いわけではなく、むしろ全員が“良かれと思って”動いているからこそ、組織全体の効率や信頼が損なわれていくことに、異常なほど鈍感になってしまうのです。

たとえば、ある社員が「忙しそうだから手伝おう」と善意で他部署の業務を引き受けたとします。その瞬間は感謝され、場の空気も良くなるかもしれません。しかし、それが常態化すると、手伝った側の業務負担は増え、手伝われた側は「助けてもらえる前提」で動くようになります。やがて、手伝った側には「なぜ自分ばかりが…」という不満が芽生え、手伝われた側には「やってもらえるはず」という依存が生まれます。そして、不具合発生時に「誰が責任をとるのか?」という問題へと発展したとき、責任論を巡って組織の分断が引き起こされ、瞬く間に崩壊していくケースも珍しくありません。

また、私の経験上の事例で言えば、

〇「助け合い」が暗黙の了解化することで、“助けない人”が責められる空気が生まれてしまう

〇善意が評価制度に組み込まれていないことによって、見えない貢献が埋もれ、「手伝うだけ損」という文化が形成されてしまう

〇「顧客の要望だから仕方ない」といった善意の残業が常態化することで、組織が慢性的な疲弊状態に陥る  などなど

つまり、善意が“前提”となることで制度的改善が遅れ、構造的な問題が放置されやすくなってしまうのです。私も幾多の落とし穴にはまりました。

善意は尊いものです。誰かのために動くこと、困っている人を助けること、余力がある人が少し多めに背負うこと。そうした行動は人間らしさの象徴であり、組織に温かさをもたらす力でもあります。
しかし、組織運営において、善意だけで持続的な仕組みを築くことはできません。大切なのは、善意を前提にするのではなく、善意がなくても機能する“構造”をつくることです。

善意は、制度によって初めて公平に扱われ、継続的に機能し始めます。制度がなければ、善意は「やる人」と「やらない人」の分断を生み、組織の信頼を蝕む要因にもなり得ます。だからこそ、私たちには「善意を制度に昇華させる」という視点が必要なのです。それは、優しさと効率を両立させる組織づくりの第一歩とも言えるでしょう。
善意が誰かの負担にならないように——そのために、私たちは制度という器を整えることから始めなければなりません。じょうむ

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